ラメールは慌てて居ずまいをただしたが、泥の汚れの下の顔がみるみるうちに青ざめていくのがわかった。「これは、お嬢さま」かれはこっけいなし
實德好唔好ぐさで身をかがめた。「あっしたちは村へ帰ろうとしただけです。この森がお嬢さま方のものだなんて知らなかったんです。何ひとつ取っちゃおりません」かれは証明するように空っぽの両手をさし出してみせた。
「いったいいつからちゃんとしたものを食べていないの」王女がたずねた。
「今朝はそこら辺の雑草を食べました。きのうはカブの根っこを少しです。多少虫がついてましたが、食べられないというほどではありませんでした」
突然、セ?ネドラの目に涙が浮かんだ。「いったい誰がそんなひどいことをしたの」
男は彼女の質問にいささか面くらっているようだった。やがてかれは肩をすくめた。「たぶん世の中でしょう。あっしたちの育てた作物の大部分は領主さまとそのご主人のところへ納めなくてはなりません。残ったものも王さまや王侯の方々にほとんど取り上げられてしまいます。おまけにあっしたちは数年前にご主人の行なわれた戦争の税金もまだはらい続けているんでさあ。それだけ取られてしまえば、あっしたちの分などほとんど残りゃあしません」
セ?ネドラは背筋が凍りつく思いだった。「わたしは今、東の国々と戦争をするための軍隊を集めているのよ」
「存じております、お嬢さま」もう一人の農奴デットンが答えた。「わしらも今朝あなたさまのお話を聞かせていただきました」
「もし戦争になったらあなたたちはどうなるの」
デットンは肩をすくめた。「そうなったらもっと税金が重くなるだけのことでさあ。それにご主人が従軍を決意されたら、わしらとられることになるでしょう。農奴はあまりいい兵隊ではありませんが、荷物のかつぎ手にはなりますんで。それに敵の城に襲いかかるときには、しばしば偉い方々はたくさんの農奴の犠牲を望まれるようですし」
「じゃあ、あなたたちは戦争に行くときに何の愛国心も感じないの」
「農奴にとって愛国心がどれほどのものでしょう。現にこのあっしでさえ数ヵ月前には自分の住む国の名前さえ知りませんでした。ここには何ひとつあっしのものなどないのです。それなのに何で愛着など覚えるでしょうか」ラマールが言った
認知能力。
セ?ネドラは何も言うことができなかった。かれらの人生はあまりに冷酷でむなしいものだった。彼女の戦争への呼びかけはさらに重荷の苦痛を与えるものでしかなかった。「じゃあ、あなた方の家族はどうなの」彼女はたずねた。「もしトラクが勝つようなことがあれば、あなた方の家族は皆グロリムに連れていかれて、いけにえにされてしまうかもしれないのよ」
「残念ながらもはやあっしには家族はおりません」ラメールがうつろな声で答えた。「あっしの息子は数年前になくなりました。領主さまがどこか戦いに出たときに従軍したんでさあ。どこかの城を攻撃する最中で、はしごを掛けようとした農奴たちの上に相手方が煮えたぎった松ヤニをぶちまけました。妻はそれを知ったとたん、何も食わずに死んでしまいました。もうグロリムだって家族を傷つけることはできませんし、あっしを殺すというのならむしろ歓迎したいくらいでさあ」
「それじゃ、あなたには戦う目的というものはないの?」
「あるとすれば食べ物だけです」ラメールはしばらく考えた後に言った。「もういいかげん空腹にはうんざりしましたからね」
セ?ネドラはもう一人の農奴の方を向いた。「あなたはどうなの」
「食べ物をくれるというなら火の中だって飛びこんでみせますよ」デットンは勢いこんだように言った
免疫系統。
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